北岳バットレス ピラミッドフェース・第4尾根

2009年8月13日〜16日
坂地・荒松

 下部岩壁の下までたどり着けるかと噂されていた荒松さんと、ピラミッドフェース・第4尾根・中央稜の継登にチャレンジしました。結果はピラミッドフェースと第4尾根だけで、昨年来の宿題になっていた中央稜は、今年も宿題に残りました。

  荒松  「山は逃げない」
  坂地  「でも、人は年を取るよ・・」

   

13日(木) 曇り時々雨
 当初、12日の夜出て13日から登攀する計画だったが、台風の影響で天気が安定しない。1日遅らせて、13日の昼に大阪を出発し、その夜はゆっくり芦安の駐車場で寝て、14日の朝、始発のバスに乗ることにした。

14日(金) 曇り
 荒松さんの提案で白根小池にテントを上げるような「無駄」を省き、1日目にピラミッドフェースと第4尾根を「速攻」してビバーク、翌日中央稜を落とそうと計画。(山行後、荒松さんは「反省」していた)
 1分でも早く広河原を出ようと、100円高かったが芦安から乗り合いタクシーで出発した。
 大樺沢経由で下部岩壁下には10時半に到着。C沢出合いまでは登山者の行列だったので、バットレスも行列だと思ったが、一人のクライマーの姿も見えない。
コールも聞こえない。11時登攀開始。

1ピッチ目(坂)
 十字クラックの左の浅い凹角を登る。

2ピッチ目(荒)
 崩壊ハングのトラバースは落石が多く、昨年の下部フランケ登攀のおりにはDガリーの下でピラミッドフェースを登攀する先行パーティから機銃掃射のような落石をもらった。そこで今回は「日本の岩場」のルート図に従って大きく巻いて、トラバースの出口に向かおうと計画した。オリジナルルートが上がっていくのをやり過ごしてさらにトラバース。

3ピッチ目(坂)
 昨年下部フランケを登攀した時に登った凹角を一段上のバンドに上がる。数mロープが足りなくて、途中でピッチを切った。

4ピッチ目(荒)
 すぐ緩傾斜帯に上がる。

5ピッチ目(坂)
 そこから右にトラバースすればよかったのに、間違えて下部フランケの取り付きフェースまで上がってトラバースしたので、行き詰まってしまう。カラビナ1枚残置して下部フランケ取り付きフェースまで下りトラバースし、ロープを1本はずして支点のスリングにかけ懸垂下降の態勢でクライムダウン。ずいぶん時間を食ってしまった。
 何のことはない、そんな苦労をしなくても元の位置から水平にハイキング道のような踏み跡を10m歩けば崩壊したトラバースの出口に出た。ぼろぼろの岩でカムも効きそうにないが、よく見たら足下に1本ハーケンがあった。がらがらしたバンドを右上して確保。
 下山したあと、ピラミッドフェースの写真を検討したが、もし技術と度胸があってあのままトラバースしていたらとんでもないところに行ってしまうところだった。

6ピッチ目(坂)
 ジェードル状のクラックが下部の核心。荒松さんはセカンドに徹するようなので水を持ってもらう。足を置いた場所がベターッと濡れていてそれからは、足が滑りそうな不安でつま先に力を入れられない。いったん降りて足の裏をズボンの裾にこすりつけて水を拭き取り、仕切りなおしてA0でぬける。

7ピッチ目(坂)
 手で抜けるハーケンがある。

8ピッチ目(坂)
 ハンマーを使うこともないようなので、トンカチも荒松さんに預ける。不思議なくらいたくさんハーケンが打ってある。下の方でこまめに取っているとヌンチャクが足りなくなってくるので節約する。

9ピッチ目(坂)
 フェースから凹角。ここの「垂直のコーナークラック」が上部の核心のはずだが、下から観察すると、どう見ても垂直ではなく寝ている。実際、6ピッチ目の凹角のほうが立っていて難しい。途中確実な支点が欲しかったのでカムをかましたが、あとはカムで支点を取るほどでもないのでビレー点まで登る。

10ピッチ目(坂)
 荒松さんが、「ここ、簡単そうに見えへんで」と言ったが、「日本の岩場」にはU級、「チャレンジ・アルパインクライミング」には階段状と書いてあるので「きっと見た目は難しそうやけど、登ったら簡単なんやで」と言って登りだした。でも、最初の7,8mはどう考えてもU級ではない。右上に入ると簡単になって、2本足で歩けるようになったら4尾根に合流した。荒松さんを確保していたら、ザックの中で携帯が鳴り出した。思わず荒松さんをほったらかして電話に出そうになった。あとから確認すると、間違い電話だった。こんな時に間違い電話をかけてこないでよ。

11ピッチ目(坂)
 薄暗くなってきたので、念のためヘッドランプをヘルメットにつけて、長いクラックの下まで。

12ピッチ目(坂)
 どこでも登れそうな広いスラブ。スラブも登れそうだが、ヘッドランプの光をたよりに、クラックに沿って登り、第1コルに上がる。我慢すれば、ビバークできなくもない。

13ピッチ目(坂)
 小垂壁の下の第2コルのほうがビバークしやすいのではという淡い期待をもって、もう1ピッチ伸ばす。

 20時。第4尾根の終了点までもう3ピッチ頑張れば、足を伸ばして寝られるが、今日はここでお仕舞いにする。行動が終了すると急に寒さを感じて体が震えだす。フリースの上にカッパを着て、食事を取る。寝ているうちに落っこちないよう、低い位置にハーケンを1本打ち足してビレーし、シュラフカバーをかぶって寝る。


15日(土) 晴れ
 荒松さんは横になっていたが、僕の陣取った場所は、真ん中が高い「へ」の字形で横にもなれず、岩にもたれて座って寝た。夜中、雲が流れて明日の天気が心配だったが、朝には雲も安定して、雲上は快晴であった。昨日は人気のなかったバットレスだが、実はぼくらも入れて3パーティ、ビバークしていたようだ。

1ピッチ目(荒)
 4尾根の核心の小垂壁をワシが行く!と荒松さんがいうのでお願いする。マッチ箱の上まで。そこから10m懸垂下降。

2ピッチ目(坂)
 枯れ木テラスまで。
 Cガリーへの下降点に朝の7時についた。中央稜に1パーティ取り付いていて、第2ハングに向かうトラバースをしているのがすぐそこに見える。
 昨日の疲れが残っているが、まだ朝の7時。時間はたっぷりあるし天気も上々。「中央稜、行く?」と荒松さんに聞く。荒松さんは「坂地さん行くんやったら、付いていくで」と活字にすると頼もしいが、顔はもうやめようと言いたげ。中央稜は半分がトラバースなので、ここで打ち切ることに決めた。「山は逃げない」、きっと...。

3ピッチ目(荒)
 第4尾根終了点まで。平らなところまでさらにロープを伸ばし、握手して記念撮影し、ロープを解いて終了。

 北岳の山頂で記念写真だけ撮って、八本歯のコルから大樺沢経由で帰ってきた。芦安の駐車場でテントを張って明日の朝早く出ようということになったので、車の運転の心配をすることなく、広河原小屋で生ビールで乾杯することができた。バス停で乗り合いタクシーの運チャンが客を集めていたので乗り込むと、バスより30分速く出発し、芦安到着は1時間も早かった。荒松さんが、足が痛いので遠くの風呂はイヤというので、バス停の隣の温泉に入ったが、民宿のお風呂ぐらいの大きさしかなかった。自販機でせっかく買った入浴券は渡す人もなく、大阪についてもウェストバッグのポケットに入ったままで、なんだか損した気分だった。


(途中でルートを間違ったので、ピッチ数は通常のピッチ数より多くなっています。)


(坂地)